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2013年8月13日~16日 裏剱を歩いた夏 室堂~剱沢~仙人池~阿曽原温泉~欅平(単独)

仙人池と剱岳

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昨年の秋に剱沢のテント場で偶然に出会ったお客様でもあるT社長と、今年はテントをかついで裏剱を歩こうということになった。

しかし、残念ながら計画していた日程にT社長の急な仕事が入って断念。

結局、急用も何もない自分は少しだけ日程をずらしてソロの小屋泊で行くことにした。

何年も前からチャレンジの機会をうかがっていたルート。

4日間にわたる長大なトレイルを、天候にも恵まれ、計画通りの日程で、いくつもの沢、谷、雪渓、峠、ダムを越えて歩いた。

剱岳本峰に向かって突き上げる小窓王、チンネや八ツ峰北面の屹立、氷河と認定された雪渓、そして山深い温泉・・・

どれもこれもが感動的で、いままでの山行では味わうことのなかった強烈な印象を残して2013年の夏休みが終わった。



■ 8月13日


朝7時に室堂に到着。

前日の夜11時に竹橋の毎日新聞社前発「毎日アルペン号」に乗ってやってきた。

本来ならばT社長のML430で立山駅まで来て、そこからバスで室堂に入る予定だったが、その足がなくなったので仕方なく自分の車で来ることを覚悟。

ところがネットで色々と調べてみると、毎日アルペン号ならば東京から乗り換えることなくダイレクトに室堂に入れる。

遠い遠い道のりを運転しなくて良いなんて実に便利だ。

出発間近だったけれど、なんとか予約もOK!

前回の北ア裏銀座の際のバスで眠れなかった教訓を生かし、酔いはほどほどにして、枕を持って対応したら以外に快適に眠ってきた。



まだ朝が早いこともあって、室堂にはそれほど人がいない。

もちろん前日からの宿泊客もいるけれど、お盆休みって意外と山は混んでいなかったりする。

これから登る立山

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準備を整えたら、まずは一ノ越へ向かって登る。

考えてみたら夏の立山に登るのは初めてだ。
11月あるいは春に、スキーで滑るために登るばかりだったから。

一ノ越まで登れば南側の展望が開ける。

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槍ヶ岳や笠ヶ岳、つい先月に歩いた水晶岳や野口五郎岳をはじめとする裏銀座が見えている。

まさにあの時に眺めた景色の、正反対側からの眺望だ。


室堂平を見下ろせばミクリガ池の向こうに大日岳と奥大日岳。

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こんな壮大な景観を、天気さえ良ければ、いとも簡単に見ることができるから室堂は賑わうわけだ。


さてここからいよいよ雄山への本格的な登りとなる。
もろいガラ場の急登で、浮石に注意しながら登る。

それでも難なく一等三角点と山座同定盤の置かれた雄山に到着。

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しかし、雄山の本当の山頂3003mは、ここではない。


あそこだ!

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鳥居をくぐった先、雄山神社峰本社

ここに登るには500円の参拝料が必要である。

せっかくだから参拝。

これもらえる。

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本当の山頂からの景色も雄大だ。

社の横には剱岳が見えている。

記念撮影

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後立山連峰

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眺望雄大なり。

槍穂高方面

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参拝すれば神主さんにお祓いしてもらえる。

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さて参拝したら立山の最高峰である大汝山に向かって前進しよう。

室堂平が箱庭のようだ。

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黒部湖を見下ろす

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約20分で大汝山へ

山頂は狭いので、写真撮影も順番だ。
だから次の順番の方に撮ってもらった。

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後方の剱岳がカッコいい。

大汝山の次は富士ノ折立へ。
この富士ノ折立を入れた山塊が立山の主峰ということになる。

そして真砂岳と別山を合わせて立山三山と呼ばれている。


富士ノ折立は頂上を少し巻き、真砂岳とのコルに向かって標高差200mの急な下り。

下りきったところが内蔵助カールの源頭部となる。

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ここからは緩やかに真砂岳に登り返す。

振り返って見る立山

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真砂岳を下って別山は巻く。

イワヒバリのつがいが歓迎してくれている。


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別山乘越からの稜線に出れば、眼前には遮る山のない剱岳が現れる。

はずだ。

はずなんだけど・・・


うーん、雲で山頂が隠れている。

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しかし、それでも圧巻の光景であった。

右に八ッ峰、左に前剱を従え、まさに日本山岳の王者と呼ぶにふさわしい。


ここから剱沢小屋に向かって下る。

岩ザレの急降下で、スリップと落石に注意が必要な歩きにくさ。

乗越まで回り込んでから下ったほうが楽なくらいなのではないかな。

剱沢のキャンプ場が近づいてくると、剱本峰が遂に顔を出した。

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昨年の秋にテン泊したキャンプ場を過ぎて更に下る。

きょうの宿、雪崩から守るための石垣に囲われた剱沢小屋が見えた。

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まずは受付を済ます。

明日はどこに行くのか訊かれるので仙人池と答えた。

ご主人は地図を出して剱沢雪渓の危険個所の説明をしてくれる。

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地図のルートはコピーしてあるが、赤ボールペンで丁寧に説明してもらった。

剱岳に登る人たちには、タテバイ、ヨコバイはじめ、ルートの説明をしてくれる。
初めて剱に登る人にはいいかもしれない。

到着したのが13時半ごろ。
ちょうど14時半まで、シャワーを浴びられるというので寝床を確保したら早速いただく。

新しくなった小屋はトイレも綺麗だし、このシャワーも近代的で、山小屋ではないようだ。

さすがに石鹸やシャンプーを使えるわけはないが、シャワーでさっぱりしたら

剱とビア

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くぅ~~~

たまらん。

夕食の時間まで、ずっとずっとこの剱岳の景色を見て過ごしていた。

小屋のサンダル履きだけど写真も撮ってもらった。

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この日は宿泊客も少なく、実に快適な山小屋ライフ。

夕食の後もウイスキーをチビチビ飲みながら、ジャケットも着こんで暮れゆく剱岳をずっと見ていた。

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剱に向かって右の方向は剱沢の深い渓谷。

その向こう側に後立山連峰。

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見飽きることはない。

その孤高、その雄々しさに、男として、またビジネスマンとして思うこと、感じることがたくさんたくさんある。

剱岳は本当に特別な山だ。


外のベンチで知り合った方と小屋に入ってまた酒を酌み交わす。

Fさんは、この日の宿泊者で私のほかに唯一、裏剱の全く同じコースを歩く方だった。
だから話も弾む。


剱沢小屋の食堂には多くの有名人たちが残したサインや写真が、たくさん飾られている。

最近では映画『剱岳・点の記』でここに宿泊していた監督はじめ、スタッフ、出演者のものや

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新田次郎

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若き日の八千草薫さんも剱沢まできたそうな!

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そんな写真を見たりしながら、宿泊の皆さんと酒を酌み交わす。

別山尾根から初めて登るという方、そもそも剱は初めてという方に、コースの指南をするベテランさんや、早月尾根を朝の3時に出て、ここまで来たというツワモノもいた。

Fさんにはコーヒー豆を焼酎に漬け込んで作った特製の酒をいただいた。

奥さまと一緒なので、明日は朝ごはんを小屋で食べずに早出するのだそうだ。


また明日、仙人池ヒュッテでの再会を約束する。

そんなこんなで夜も更け、8時半には床に入った。



■8月14日


朝の剱岳

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朝5時から朝食

6時には出発

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天気良し。


剱沢の沢筋に沿ってガレ場を下る。

やがて雪渓が出てくるのでアイゼンを装着。

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朝は雪がカチカチにしまっているのでアイゼンは6本爪以上が好ましい。

それにしてもドでかい雪渓だ。

まだ歩き始めたばかり。
でも見上げるとこれ

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やがて左手に平蔵谷

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できるだけ雪渓の3分の1の位置をキープするように歩く。
(真ん中と端は雪渓が崩壊して落ちると危険)

東京は今日も猛暑なのかな?

雪渓にいると全く信じられない。


さらに下って源次郎尾根を左に見ながら長次郎谷出会へ

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この辺りが例年、一番注意が必要らしい。
何度か事故も起きている。

しかし今年は雪も多く、雪渓は安定しているように思えた。

剱沢小屋のご主人に教えてもらった通り、真砂沢ロッジの水パイプにそって進み、夏道を探す。
滝に近づくと危険だ。

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雪渓がやっと終わると真砂沢ロッジに到着。

ここでアイゼンをはずし、ドライフルーツなどを食べて大休止


この先は大きくなった剱沢左岸の登山道を進む。

時折ペンキやケルンを見失いそうになるので注意深く歩く。

途中の河原で剱沢小屋で出会ったFさんご夫婦に追いついた。

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お先にどうぞ、というので先に進む。

二股までは滑りやすい岩場の高巻きなども数か所あるので注意が必要だ。
カニのヨコバイ並みにクサリでへつらなければならないスリリングな高巻きも一か所あった。

二股で吊橋を渡る

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こんな山奥に、よくもこんな立派な橋を作ったものだ。

ここで剱岳東面の切り立った八ツ峰と三ノ窓雪渓がとうとう現れた。

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天気が良いからきっと仙人池からは素晴らしい裏剱を見ることができるだろう。

武者震い一発、仙人新道のキツイ登りにとりつく。

汗がほとばしる。

この登りを越せば楽園が待っていると思うけど、キツイものはキツイ。

しかし次第に見えてくる景色はその苦労を癒すに余りある。

剱岳八ツ峰とチンネ そして氷河と認定された三ノ窓雪渓

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このダイナミックな岩峰こそ、今回のトレイルで求めていた風景だ。

それは、まさに「試練と憧れ」の山といわれる剱岳を端的に表している。

この堂々よ、この雄々しさよ!

感無量。

さらに登っていけば池ノ平山と小窓ノ頭の間に小窓雪渓が現れた。

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そんな景色を見ながら登り行けば、やがて仙人峠にたどりつく。

ここから、今日の宿泊先である仙人池ヒュッテの赤い屋根が見えた。

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後方に見えているのは唐松岳から不帰ノ嶮、そして白馬岳に至る稜線だ。


時間は早い。
まだ午前中。


だからザックをデポして池ノ平に寄り道することにした。
往復で1時間ほどの行程。

湯を沸かして、うどんでも食べようかとも思ったが、面倒くさいのでカロリーメイトとか、ドライフルーツとかを食べた。
これでエネルギーチャージ完了。

必要なものだけを持ち、空身に近いから走れるくらいだ。


はじめは木道も実に気持ち良い道。

高山植物もたくさん咲いている。

振り向くと、仙人池ヒュッテもまだ見えて、パラダイス的風景が広がっている。


やがて眼下に池が見えてくれば

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池ノ平山をバックに池ノ平小屋が見えてくる。

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小屋の前からの景色は

パラディーゾ!

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写真だとそれほど見えないけれど、高山植物のオンパレード。

奥に見えている双耳峰は鹿島槍ヶ岳だ。

ここからの雪形は「モンローの唇」と呼ばれるのだそうだ。

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なるほど、いわれてみればね。

池ノ平小屋は小さな小屋だけど、なかなか雰囲気がある。

休ませていただくので飲み物くらいは買おう。
ビールといきたいところだけれど、まだ行動中だからコカコーラを買った。

小屋の女将さんに、どこから?

と訊かれたので、剱沢からと答えると、あら早いわねぇー、と言われた。


コーラを飲みながら、小屋の日陰にあるベンチで眼前に広がる景色をボーっと眺めていた。

小屋の前にはモリブデンが含まれた鉱石が置かれている。

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戦時中、ここはこのモリブデンを採掘するための拠点だったのだ。
モリブデンと、その採掘の歴史についてはここでは書かない。
興味があったらググってみると面白い。


もし当初の予定通りテント泊だったら、この小屋のテン場に泊っていた。
なぜなら仙人池ヒュッテにはテン場がないのだ。

今度はこの小屋にも泊ってみたい、そんな気持ちで池ノ平小屋を後にしてザックをデポしたままの仙人峠に向かった。

花咲く道を仙人峠まで戻り、仙人池ヒュッテに到着。

受付の前に、とにかく池に行く。

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ここも、パラディーゾ!

八ツ峰の1峰から8峰を総なめ。

右側の台形が小窓ノ王。

一番高く見える尖峰がチンネ。

6峰と7峰の間に、剱岳本峰がほんの少しだけ見える。

なんという景色。

深田久弥の『日本百名山』にはこう書かれている。

おそらく剱岳の一番みごとな景観は、仙人池あたりから望んだものであろう。
眼前に岩と雪の交錯したダイナミックな光景が迫ってくる。
雄々しい岩峰と、その間隙に光る純白の雪。
これほどアルプス的な力強い構図は他に類がない。
その男性的な眺めに緊張した眼を下に移すと、そこにはメルヘン的な原がやわらかに広がって、
そこの池沼に岩と雪の剱岳が逆さまに映っている。



小屋に入って受付を済ます。

二股手前の河原で追い越したFさんご夫妻も少し前に到着したところだった。

空いているから、部屋のどこでも好きなところを使ってくださいということだった。
まずは寝床と荷物を整えた。

風呂を用意してあるということだったので、ありがたくいただく。
ポンプでくみ上げた水をボイラーで沸かしてくれている。

昨日といい、今日といい、山小屋で風呂に入れるなんて最高だ。


さっぱりしたところでビア。

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しかも、窓から見える景色が凄い。

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隣の席では、ずーっとアサギマダラ氏がテーブルをずっと吸っている。

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このテーブルから何か出てくるのだろうか?

Fさんご夫妻は外でラーメンを作っていた。

500mlを飲み干し、美味しいからもう一本350mlも追加。

アサギマダラ氏は、本当に全くどこかに行く気なし。
ずっと隣の席で一緒に飲んで、我々は飲み友になった。


ビールを飲み干したら、サンダル履きでまた池に出てみる。

どれだけ見ていても見飽きることがない。

何度も言うがツルギはスペシャルだ。


5時から夕飯。

きょうの宿泊は自分を入れて5名。
Fさんご夫婦と、横浜から来ていた30代男子2名とオレ。

皆で酒を飲みながら楽しくて美味しいディナータイム。

富山名物の「黒造り」と呼ばれるイカスミ入りの黒い塩辛がたまらなく美味しくて、酒が進んだ。

夕食後もまた池に出て剱岳を眺める。

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2013年 夏、裏剱。

もしB.Cスキーや山登りをやっていなかったら、くじけている場面もあったかもしれない。

雄々しく大きな山を見て自分を鼓舞した頃もあった。

山は、動じない心とか、突破する力を与えてくれたかもしれない。


月、立山、剱、仙人池

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山はいい。
特に剱は・・・そんな夕暮れだった。



夜は食堂でスタッフの皆さんたちも交えてウイスキーを飲む。

色々な話題で盛り上がったが、8時半には床に就き、お休み3秒だった。



■8月15日


朝の3時半頃に眼が覚めた。

部屋の窓から空を見ると満点の星空。

ペルセウス流星群が見れるらしいので、しばらく見ていたが流れ星は見れなかった。
外に出ればもっと見やすいだろうが、窓に吐く息でガラスが曇る。
寒そうだ。

布団を窓際に持ってきて、寝ながらにして空を見る作戦を決行したが、そういうインチキは通用しなかった。
というより、ウトウトしながら寝てしまった。

食事の用意ができましたという小屋の方の声で眼を覚ます。
朝5時。

しかし、食事の前に朝焼けに染まる剱岳を見るために池に出る。

他の皆さんも揃っていた。

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だんだん焼けてきて

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言葉はない。

ここにいて良かった。



5時半頃から朝食。

Fさんご夫妻は、昨日と同じように早出した。

きょうも阿曽原温泉小屋で一緒になる。

朝ごはんの後、出発の準備をしたが、どうにも名残惜しくてまた池に行き、剱岳に頭を下げて別れを告げる。

横浜からの若者2名は剱沢に戻るというので、お互いの無事を祈って別れた。

小屋の方にもお礼を言って出発。

良い小屋だった。
また必ず来る。


さて、まずは仙人谷の沢底に大きく下るのだが、ここで雪渓の洗礼。

小さな雪渓は、朝だから固く凍ってはいたが、スプーンカットの窪みにうまく足を乗せながら、つぼ足でクリア。

しかし一旦、夏道になるも、また大きな雪渓が現れる。

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アイゼン装着。

ここはルートを慎重に選ぶ必要がある。

夏道で高巻きするルートを見誤らないこと。
また、雪渓の弱い場所に乗らないことが大事だ。

後から聞いたのだが、Fさんご夫妻はここで、なんと雪渓が崩落して1メートルほど落ちたのだそうだ。
雷のようなドーンという轟音がしたという。

幸いにも1メートルだから何もなかったが、これが3メートルとか5メートルとかだったら・・・
ぞっとする。

雪渓を縦に3分割して、その3分の1のライン上をできるだけキープする。

残雪が多く、ソロということもあってルートファインディングに苦労した。

なんとか雪渓をクリアして、やぶが濃くなってきたと思ったらFさんご夫妻に追いついた。
そして先程の話を聞いた。

雪渓が2か所ほど落ちていたのを確認したが、そのうちの1つがそうだったのかもしれない。

奥様が少し腰を打ったようで、ゆっくり歩くので先に行ってくれという。
歩けないとか、怪我とかいうわけではないので、先に進む。

すこし下ると仙人温泉小屋に飛び出した。

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ここで小休止。


源泉は小屋の少し上にある。

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この源泉の手前で仙人谷の右岸に渡り、山腹を横切るように登り返す。

温泉小屋が小さく小さくなるくらいに登ると尾根のピーク、標高1629mの地点に出る。
標識が設えてあるので分かりやすい。

さて、ここからが雲切新道の激しい下り。

はしご、ロープ、くさりの連続。

鹿島槍から白馬方面の展望は素晴らしい。

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1550メートル付近で3段に分かれたハシゴを下り、さらに下ると細いリッジ状の尾根に出る。
転落しないように進む。

ブナの多い樹林帯に入れば、あーもう勘弁してくれーと言いたくなるような、ひたすら、ひたすら下りだ。

やっぱりここはアルプスだけに、そう簡単ではない。

やがて仙人ダムを見下ろすようになる。
さらに下って丸木橋で仙人谷を渡る。

この先の辺りからクサリのある人工的なコンクリートの道を行く。

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そして、高度感たっぷりの下が切れ落ちた3つのハシゴを下る。
これ、下を見るとダム湖に真っ逆さまだ。

ちょっと怖いけど、ここをクリアすれば仙人ダム。

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ダムの上に立つと、轟音とともに大量の放水を見ることができた。

さて、このダムの日陰で小休止。
景色も良い。

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激しい下りの疲れを塩分チャージのタブレットとドライフルーツで和らげる。


ここからはダムの旧日電歩道の標識に従って阿曽原方面に進む。

こんな地下道を通って行く。

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この中は凄く涼しい。
というか、ずっといたら寒くなるだろう。

しかし、このような山の奥の奥の、そのまた奥に、こうした建造物があるということが凄い。
もちろん、黒四ダムは更にもっとずっと奥で、更に巨大だ。

当時の日本は、どうしてもどうしてもどうしても、どうしてもどうしてもどうしても、電力が必要だったのだ。
いまの日本の発展は、電力なくしてはあり得ない。

この辺りから、大自然と電力開発という相容れない巨大な力のせめぎあいが、この山行に、ずっとついてくることになる。

原発があんなことになっている今、色々考えさせられるルートでもある。


ダムから出ると、少し登り返しが苦しい。

そして水平歩道をしばらく行けば、今日の宿泊先、阿曽原温泉小屋だ。

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こちらの小屋は、他の小屋が雪の重さや雪崩に耐えられように石垣で囲ったり、強度を強くして建てているのとは違い、毎年 晩秋には解体して、その壁や柱や天井をトンネルの中に収納する。

そして夏になると再度、組み立てるのだ。

全く、その御苦労といったら頭が下がる。


到着したのは昼ごろで、一番のりの客だった。

きょうも大きな部屋に通されて、好きな場所を使っていいといわれた。
すでに前の日から連泊している方のザックもあった。


昼ごはんをまだ食べていなかった。

荷物を軽くしたいので、うどん(岳食)を食べることにした。
どこかで火を使わせてもらえるか聞いたところ、食堂で使っていいと言われた。

うどんを食べていると、ご主人がおそらく温泉の掃除から戻ってきて、温泉のお湯がもうすぐ一杯になるから、入ってきていいよと言われた。

今から2時半まで男湯にするということだった。

温泉へは、小屋から7~8分ほど下る。

サンダル履きで行けますか?
と訊いたら、この時間に仙人池から来れる人なら大丈夫と言われた。

阿曽原温泉

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この雄大な自然の中の温泉を独り占め!

50も過ぎたオッサンが、山に向かってフルチンでヤッホー!

やりたい放題だ。

もう、最高。

疲れは全てすっ飛んだ。


温泉から出たら、食堂でビア。

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テレビでは甲子園の高校野球をやっている。

そういえば、この数日間のニュースも何もわからない。

小屋の窓からは峡谷が美しい。

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しばらくすると雲切新道の途中で抜いてきた2人組の方が到着した。
どうやら一人の方が膝を痛めたらしい。

抜いた時は座っておられたので気が付かなかった。

小屋のご主人がテーピングしてあげていた。


小屋のスタッフの方に、Fさん夫妻はおそらく2時頃になるだろうという情報も入れておいた。


350mlをもう一本飲んだ。

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2時30分ごろ、Fさんご夫妻も到着。


さらにしばらくすると前日に欅平から入って泊まっているという青年も戻ってきた。
同じ部屋に置かれていたザックの持ち主だ。
自分が小屋に到着したのと同時にどこかに出て行った青年だった。

きょうはダムまで行ってきたのだという。

他に3時半頃になって同室となるソロの方が1名、真砂沢ロッジから来たという。
ご苦労なことだ。

ダラダラ飲んでいるうちに夕食。

きのうもコーヒー味の焼酎をいただいたFさんに、きょうは自分のウイスキーを飲んでいただいた。

酒が切れれば小屋で購入して飲んでいた。

NHK富山が制作した番組の上映会もあった。

この阿曽原温泉小屋と、昨日の仙人池ヒュッテに関する歴史とか、小屋開け、小屋閉めの苦労、登山道の整備などを描いた番組。

とても興味深い内容だったし、小屋の気さくなご主人の人となりがよくわかった。

本当に良い小屋、素晴らしいご主人だった。

ダムまで行った青年は酒が飲めないのだけれど、まだ山をはじめて2年ということで、オレと同室の真砂から来た方に色々な質問をする。


テントは何がいいのか?
シュラフはどうなのか?
西穂高岳から奥穂高岳に行くには何が必要なのか?
北方稜線はどうすれば行けるのか?

目がキラキラ輝いている。

若いって素晴らしい。
戻りたいなって少し思った夜だった。

そのうち酔いと疲れで眠くなる。

多分、8時頃には眠ってしまった。



■8月16日

4時に起床。

同室の2名もすでに起きていて、青年は温泉に入って、6時から小屋の朝ごはんを食べて、ゆっくり欅平に下るという。

もうひとりの方は、同じ欅平に向かって4時30分には出発した。

オレは、朝ご飯を弁当にしてもらっていて、それを部屋で食べてから5時に出発。

3日間お世話になったFさんご夫婦は、きょうも名剣温泉か宇奈月温泉に宿泊ということで、ゆっくりの出発だから挨拶はできなかった。
名古屋のご自宅、連絡先をきいておいたから、帰ってからゆっくり手紙を書こう。

小屋のご主人はもう起きていて、お礼を言って出発。

ここには絶対にまた来たい。
秋、平日なら最高なんだけど・・・

テント場を過ぎて沢を渡ると、すぐに標高差約150mの登り。
朝からキツイ。

ここから水平歩道をたどる。

いくつもの谷を越え

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滝を越える。

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水平歩道と言っても、水平な道が続くわけもなく、崩壊しそうな場所や、岩を穿てなかった場所を高巻いたり

こんな倒木も、いくつも突破しなければならない。

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一時間半ほど歩いていたら、30分ほど前に出発した同室の方に追いついた。
きっと昨日の疲れが出ているのだろう。

先に行かせてもらった。


この水平歩道は旧日電歩道と呼ばれ日本電力が黒部電源開発のために穿ったものだ。

阿曽原の光熱地帯にトロッコの線路を通す工事は困難を極めたという。
その様子は吉村昭の小説『光熱隧道』に生々しく描かれている。

そこまでして、どうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしても
どうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしても
電力が欲しかった時代だったのだ。

巨大な利益もあっただろうが、国家として絶対にやらなければならなかった時代だったのだ。



狭くて高度感のある道が延々と続く。

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右手は常に断崖絶壁で、転倒して落ちようものなら命はまず無くなる。

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黒部峡谷のスケールに圧倒されながらも、ここに道を作った人たちの苦労がうかがわれる。

しかし、この道の狭い場所ですれ違うのは恐ろしい。
クサリやワイヤーもあるけれど、所々で抜け落ちたりしていて、全面的に信頼してはならない。

だから、すれ違う人が来ないうちに、そして欅平が観光の人たちで混み合わないうちに着きたい。

休憩せずに歩く。

志合谷のトンネルに到着。

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予定より早く歩いている。

このトンネルは150メートルほどある狭いトンネルで、照明などあるわけがなく、ヘッドランプが必要だ。
ソロで歩くなら電球切れなどが決してないようにしなければならない。

トンネルの中の足下は水が流れている。
深いところで10cm、平均でも5センチ程の小川のようだ。

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きちんとしたゴアとか革の登山靴じゃなければ通れないと思った方が良い。


このトンネルを抜けると奥鐘山の西壁が圧倒的なスケールで迫ってくる。
黒部の怪人と呼ばれる岸壁だ。

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黒部は、本当に凄まじい。

この先も狭いルートは続くが、朝も早いのですれ違う人もなく、しばらく進めば尾根上に出る。

これをたどると大きな送電線の鉄塔に辿り着き、ここが水平歩道の富山側上部となる。
ここでまだ朝8時半。

早かった。

ここから欅平までは急降下。
疲れた脚には多少のダメージ。

しかし、欅平の駅が見えてくればゴールは近い。

結局9時少し前には欅平の駅に着いてしまった。


思えばはるばる遠くへ来たものだ・・・
という感慨はあとにして、まずはトロッコ電車の切符を買う。

9時16分の始発電車にも間に合うのだけれど、宇奈月よりも欅平で温泉に浸かりたい。

聞けば、10時台のトロッコもまだまだ空いているというし、猿飛山荘の温泉も営業しているという。

というわけで10時半ごろのトロッコ電車の切符を購入し、猿飛温泉へ。

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渓流を見ながらの源泉かけ流し。

4日間の山旅もここで終わり。

温泉に入って改めて感慨に浸る。

室堂から欅平へ、思えば2日目からはどこの山のピークに立つでもなく、ただひたすらにいくつもの峠、雪渓、渓谷をたどり、つなぎ歩いた。

剱と黒部の半端ではない懐の深さとスケールに圧倒されながら、それでも本当に旅らしい旅だった。

冒頭にも書いたとおり、今までの登山とは違う、強烈な印象の残る山行だった。


温泉でさっぱりしたら、短パン、Tシャツに着替えた。
ヒゲはボーボーだけど。

トロッコ電車に乗る。

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旅の終わりは、のんびりと黒部の風景を見ながら観光気分で1時間20分。
黒部峡谷鉄道の宇奈月駅へ。

そこから電鉄富山の宇奈月温泉駅まで2分ほど歩く。

駅の前にあったお土産物屋さんが経営している食堂で、白エビのかき揚げそばを食べた。

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これが何気に旨かった。
かき揚げに白エビはあまり入っていなかったが、そばと汁が良い。

もし電車の時間に余裕があったら、もう1杯食べてしまっただろう。

10年だか15年前に福井駅の立ち食いそば屋で食べたそばを彷彿とさせた。
あの時は、マジで2杯食べた。
おばちゃんに「おなかすいとるんやのぉ~」
と言われたのを思い出す。

北陸のそばは旨いのだな。

宇奈月温泉駅から味のあるローカルな電車で新魚津に出て、JRの魚津駅へ。

切符売り場で、東京まで指定席で帰りたいと言って切符を頼んだら指定席は夜までないと言われた。
グリーンもないという。
帰省ラッシュの日だもんな。

仕方ないから一番早く帰れる特急はくたかの自由席に乗り込んだ。

座ることは期待していなかったが、なんだか座れた。
自由席の方が空いてるとは。

車内販売のビールを買って飲んだ。

越後湯沢で新幹線に乗換え。

急いでいるわけではないので、1本遅らせて、駅に多く停車する方の新幹線に乗ったら、こっちも座れた。

大宮を過ぎ、赤羽を過ぎ、上野も過ぎて東京に戻る。

東京駅は、帰省なのか、観光なのか、いつもはビジネスマンの多い構内がファミリーでごった返していた。

乗ってきた電車も、この巨大な駅の照明も、地下街やデパートの空調も、全て電気で動いている。
電気、電気、電気・・・


きのう入った阿曽原温泉、仙人池からの朝焼けに染まる剱岳、巨大な雪渓を吹き抜ける涼風、剣沢から見た剱岳の豪宕と峻烈・・・

全てが夢のように思えた。

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テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ

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非公開コメント

あれ?今気付いた。前にこの記事にコメントしたのにアップされてなかったらしい?
と言うわけで、遅ればせながら、スゴイスゴイ!!
私には無理そうだけど、阿曽原温泉だけでも行きたいなあ~~。

ichi様

ichiさんなら、全く問題なく歩けます!阿曽原温泉、素晴らしいよー!そのうち、この温泉だけでも行きましょう!
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辻本孝良

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