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一番情けない登山・・・西穂高岳独標へ

西穂高岳(一番左のピーク)中央は西穂独標

P1030515.jpg


「足、どう?まだ痛む?」
岩崎さんが私を気遣って訊いてくれる。

しかし「申し訳ありません・・・昨日より痛いです・・・」と答えなければならなかった。


4月30日の朝5時。
西穂山荘の朝食は5時半からだから我々と同室の他の4名もモゾモゾと起きだしたようだ。

「この足ではかなり遅くなるし、痛みでどこまで行けるかわからないから岩崎さんはなにしろ先に行ってください。僕はゆっくりゆっくり行けるところまで行きます。だめだと思ったらすぐに引き返します」

山岳会の先輩である岩崎さんからGWに西穂高岳をやらないかとお誘いがあったのは4月の中旬。
毎年恒例のGW残雪登山、自分では漠然と槍ヶ岳とか五竜岳あたりを考えていたのだが、西穂ときいて即「お伴します!」と回答した。

P1030519.jpg


岩崎さんは年上だが、山歴だけは私の方が長い。
長いが緩い。
そして、いまはこのザマだ。
痛みで普通に歩けない。

昨日はなんとか小屋まで登って来たが 、西穂高岳どころじゃない、独標すら踏めないかもしれない。
だから今、岩崎さんに単独で山頂を目指してほしいと お願いした。是非西穂高岳の頂を踏んで来て欲しかった。
というより、なんとしても楽しい日にしてもらいたかった。
オレの脚のせいで気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


5時半から朝食。
いつもならご飯は2杯は食べるのだが、なんだか食欲もない。
足の痛みが常に頭のどこかにある。

食後すぐに岩崎さんは西穂高岳を目指して小屋を発った。
その後姿を見送りながら山の神様に、岩崎さんがニシホの山頂に立てることと無事を祈願した。

自分もサブザックに防寒着、アウターシェル、テルモス(サーモス)、行動食、非常食、ツェルトやら非常用グッズ等を詰め込む。
靴紐を締めあげながら、冬用のブーツも今シーズンは今日が最後の出番かななどと思った。

これが数カ月前に初めて痛風を発症した時だったら恐らくこんなに強く締め上げることは出来なかっただろう。
あの時はすごく腫れていたし、もっと痛かった。
そもそも、この小屋まで登ってくることもできなかっただろう。
今回の痛風は前回より軽度の痛みで、その点だけはラッキーだ。

昨日の朝、まさにこの山行当日の早朝、起きてみると右足の親指付け根付近が痛かった。
そしてその痛みは経験がある痛みだった。
ほんの数週間前には学生時代にスキーでヒビが入った左足の踝付近が炎症をおこして痛みが出たこともあった。
それはちょっと無理なジョギングが原因だったのだが、その痛みとは別物だった。

痛風の再発に間違いない。

痛風・・・

仲間や友人にも痛風持ちは数人いる。
しかし今年の初めまでは自分には全く関係のないことだと思っていた。
その痛風持ちになったことは家族や親しい友人知人には話していたが、あまり自慢できることではないから話す必要がなければ話してはいない。
TwitterやFacebook、ブログにも書いていない。

そして発症後はそこそこ節制していたつもりだったが、このところまた元にもどりつつあった。
喉元過ぎて熱さを忘れちまった・・・
先々週など、八丁堀にあるモツ鍋の名店「一慶」で友人のK弁護士と名物の炙りモツを、ビールと一緒にしこたま食べた。
そして一昨日、山に行く前日は嬉しくて眠れないと困るのでワインとウィスキーをこれまた、しこたま飲んだ。

そんな悪い生活習慣に戻っていたことも事実だ。
痛風は、そんな慢心を見逃しはしない。
痛風恐るべし・・・
というより自分がアホバカなのだ。

小屋の前でスパッツとアイゼンを装着してピッケルを手にする。
凛とした気持ちになる瞬間。
正月の八ヶ岳赤岳以来だ。

まずはひと登りの西穂丸山に向かう。
せめて独標、あわよくばピラミッドピークまでは行きたい。

右足に強く加重すると痛むから引きずるようにして登る。
だからといって全く加重せずに登ることは不可能だ。
朝6時半、雪が締まっていてアイゼンが良く利く。

カラフルな流行りのウェアを着て、ローカットのトレランシューズに軽アイゼンを着けた山ガール&ボーイにヒョイっと抜かれた。
丸山まで行くのかな?
ローカットの靴で雪は靴の中に入らないのかな?
まあ、この時期なら凍傷にはならないのだろうけど・・・
あまり納得はできない。

なんとか通常の1.5倍くらいの時間をかけて丸山にたどり着く。

P1030462.jpg

上の写真は前日に撮影したものだ。

こちらも前日、岩崎さんと撮った写真。

P1030460.jpg

後方に聳えるのが西穂高岳。

昨日は山小屋まで痛風の足でスローペースで登って来たが、それでも時間が余った。
新穂高ロープウェイ駅の蕎麦屋さんが言うには、4月30日、すなわち今日は午後から天気が悪くなるし、もしかしたら午前中からガスが出るかもしれないと聞いていた。だから景色が見えなくなっては大変ということで丸山までは昨日も登っていたのだ。

ここで少し休憩。

ニシホの反対側の景色は焼岳や乗鞍岳が美しい。

P1030471.jpg

(これも前日4月29日に撮影した)


丸山からは斜度がきつい雪面の登り。
2歩進んではピッケルを突き刺して止まる。

イテーよ~、イテーよ~

すでに森林限界は超えていて風が吹けば寒いくらいだ。
陽が出ていない曇り空。
しかし景色は見える。
北アルプスのすごい景色が。

P1030487.jpg

岩崎さんはすでに独標を越えているだろうか?
60歳を過ぎても日頃から節制して大きな山を目指す志が素晴らしい。

それに比べてオレはどうだ?

山に行く当日に痛風になる奴なんかいるか?
アホだ。
マジで泣けてくる。

確かに仕事で飲む機会も多いが、そんなの毎日ではない。
ようするに普段の生活習慣が悪いのだ。
この生活習慣を改善しなければ穂高に来る資格なんかない!

時間はかかったが独標直下の岩稜帯まできた。
さっきの山ガール&ボーイが 休憩していて、ここから進まずに下ろうと話していた。

オレはさらに進むのか?
足は相変わらず痛い。
しかし進む。
いまここ、穂高にいるということ、そして高度を上げるとともに変わる山の景色が痛みに勝っている。

だから岩に取り付く。

普段なら何ということはない岩場だが、踏ん張ると痛む右足を庇いながら登っていかなければならない。
岩と雪、時々氷のミックス。
右脚のアイゼン前爪で立つことができないから、うまい足がかりを探しながら登る。
痛みに耐えながら独標まではなんとか行きたいという気持ちだけだ。

これまで痛風の痛みに耐えながら独標まで登った人はいるのだろうか?
もしいなければオレが最初の痛風登山者だ!
ウェストンや嘉門次のように顔入りのレリーフでも作ってくれるかな?
そのレリーフに刻まれる文句はこうだ。

「痛風の脚で登ってきた呆れてものが言えないバカな山愛好家」

気絶まではいかないが、痛みに耐えて登っていると脚ではなく脳みその奥のほうが重い。
近くに登山者はいないし、ほぼ岩が露出しているので金属(アイゼン)が岩と当たる音、こする音、そして自分の呼吸している音しかしない。
いつもの状態ならば、それほど難しくはない岩場を慎重に慎重に三点支持で高度を上げる。

そして、着いた。

西穂独標

P1030492.jpg

誰もいない。
ドサっと座りこむというより、へたれこむ。
痛む脚を休ませたかった。
休ませたところで痛みが治まるわけではないのだけれど。

山名標識の向こうに真っ白い笠ヶ岳がデーンと鎮座している。
その右に抜戸岳。

東には、今いる西穂独標からピラミッドピーク、西穂高岳へ続く岩の稜線。
その先にはジャンダルムと昨年の秋にも登った奥穂高岳。

奥穂高岳から吊尾根に連なる北穂高岳。

荒々しい穂高連峰にあって吊尾根が描く優美な曲線は見る者を釘付けにしてしまうだろう。
見とれていれば少しだけ痛みを忘れる。

P1030502.jpg

その先は明神岳、眼下には梓川が流れその梓川をはさんで夏に登る予定の霞沢岳。

梓川の下流には上高地のバスターミナルや帝国ホテルの屋根が見える。
河童橋から見上げる穂高の逆の景色だ。

更に遠くを見ればまだ真っ白な乗鞍岳、その手前は 焼岳…

ここから見える名山を全て同定したならば枚挙にいとまがないだろう。

とんでもない景色が痛みを 消してくれる。

そのとんでもないのは動画で見てね。




ピラミッドピーク、そして更にその向こうに岩崎さんの姿を探すが見えなかった。
見えたとしても山が大きくて見つけられないかもしれない。

西穂に続く稜線を眺める。
この先、独標からの 下りは垂直に近い。

ピラミッドピークまで行けるか?

筋肉は全く問題ない。
心肺機能も心配ない。
(ここ少し笑うとこ)
しかも曇ってはいるが天気も悪くない。
午後3時頃までは荒れはしないだろう。

しかし痛風の痛み、こいつだけがオレを苛む。

踏ん張りのきかない右足では時間的に考えてもこの先は無理だ。

撤退を決意。

悔しさがこみ上げる。
いままで経験したことのない敗北感 。
山の厳しさとか、嵐や吹雪で撤退したのではない。
自分のいい加減な生活、不養生のせいで撤退するなんてクソだ。

穂高の山々を前に自分の不甲斐無さに打ちのめされていた。

3人のパーティーが登って来た。
西穂の山頂まで行くという。
写真を撮ってあげた。
ついでに撮ってもらった。

P1030496.jpg

もっと行かないのかと訊かれたので、行けないと答えた。
恥ずかしいから痛風が痛むとは言わなかった。
先に進む彼らに、気をつけてと言って見送った。

まだまだ景色を見ていたくてアウタージャケットを着込む。
相変わらず足は痛む。
そしてここは穂高。
おかしな気分だ。

次は単独の方が登って来た。

同じようにニシホを目指すのか?と訊かれた。
行かないと答えた。

シャッターを押してあげた。
ついでだから、またこちらも撮ってもらった。

P1030500.jpg

その人は、しばらく先に進むかどうするか迷っていた。
広島から来たので、せっかくだしなぁ・・・と言っていた。

後押しはしない。
私はガイドの資格も持ってなければアドバイスする力量もない。
しかも生活習慣病のオジサンだ。

結局、その人はニシホを目指して先に進んだ。
「気をつけて」と言って見送った。
羨ましかった。

このままずっとここにいるわけにもいかないので西穂山荘に向かって、登ってきた道を下る。
岩崎さんとはそこで落ち合うことになっている。

またまた独標からの岩場・・・
いつもと違う意味でキツイ・・・というか痛い。

前回は3日目で痛みは消えた。
昨日はアルコールを口にしなかったから、一日で痛みも治まるのではないかという期待は見事にはずれた。
しかし今回も明日になれば痛みは消えるのではないかな。
よりによって何でこんな時に・・・
くそー・・・

慎重に下って見あげれば独標

P1030506.jpg

少し平らなところで痛み止め休憩。

その先もゆっくりゆっくり下る。

昨日、夕食後の団欒タイムで、ある人が独標の手前あたりで冬毛の雷鳥を見たと言っていた。
それを思い出し、2~3歩進んでは雷鳥を探した。

P1030507.jpg

しかし残念ながら会えなかった。

急峻な岩稜帯は風で雪が吹き飛ばされて岩が露出しているが、このあたりから小屋までは雪が多くなる。
その方が痛みが少なく歩ける。

非常に時間はかかったが、なんとか西穂山荘にたどり着いた。

外でスパッツとアイゼンをはずし宿泊者用の玄関口で靴紐を緩めた。
緩めたところで痛みが軽減するわけではなかった。

デポしてある荷物とサブザックの荷物をまとめてから山荘で大休憩。
岩崎さんを待つ。

こちらは昼はレストランで夜は自炊の方々のスペース&談話室。

P1030509.jpg

もちろんビールなんかNG。
そもそもまだロープウェイ駅の西穂高口まで下りがあるから飲みはしないが、昨日も今日も飲んでない。
山小屋に泊まったのにビールを飲まないなんて初めてだ。

西穂山荘名物のラーメンも我慢し、きょうの昼食用に持ってきていた、いなり寿司を食べた。
ラーメンは痛風に良くないからだ。
あとは行動食のナッツ&ドライフルーツ。

山荘にはケーキセットを注文。

りんごのシブースト

P1030510.jpg

シブーストが何なのかは理解していないが、非常に美味しかった。
コーヒーも美味しい。

家族にメールしたり、お土産を見たりして1時間20分も過ごした頃にAUの携帯に電話。
岩崎さんからだった。
すでに小屋付近まで降りてきてきているという。
小屋の食堂にいることを伝えると、間もなく帰還。

おめでとうございます!

小屋ではみやげ話をたくさんしてもらい、その後西穂高口まで下る。

槍の穂先が少しだけ見えた。

P1030513.jpg

帰りの中央高速道は激しく渋滞していたが、そんな中でもいろいろな話を聞かせてもらった。
山の話をしていると、あっという間に時が過ぎる。

今回の山行で、健康の重要さを思い知らされた。
健康診断の度に、尿酸値が高い、γ-GTPの数値がダメ、体脂肪率が少し高め・・・・
などと言われているにもかかわらず、オレは大丈夫!などと高をくくっていた。

しかし、もう若くない。
だから、もし山を続けたいのならあんたの生活習慣を変えなさい!と穂高が教えてくれたのだ。

徳川家康が三方原で武田軍に敗れたあとに描かせた肖像画を常に戒めとしていたように、この岩崎さんからいただいた写真を自分の戒めとする。

登れなかった2012年4月30日の西穂高岳山頂
RIMG0169-201204300846_R.jpg

そして

捲土重来


穂高の山々に誓った。


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お疲れさまでした

無理・無茶は禁モツっす。
ご無念の程、お察ししますが、ご無事で帰られて何よりです。
ともかく、養生して下さいませっ♪

のんき 様

モツは私の青春でした・・・
というか、夜の主食でした。
お気遣いありがとうございます。
でも、肉なら大丈夫!
ホッピーも!
たまにはね。

共に泣き、共に笑いながら読ませていただきました(^_^;)
ぜひ節制をしていただいて、夏は楽しくお山に参りましょう♪

ichi 様

節制しますので、今後共よろしくお願いいたします。

なんで女性は痛風にならんのだろうか・・・・?
プロフィール

辻本孝良

Author:辻本孝良
東京都中央区で会社経営してますがビジネス関係の記事はほぼありません。
山とか酒とかB級グルメとか阪神タイガースとかの、どうにもならないような記事ばっかりです。

50歳を過ぎているというのに志の低いブログでごめんなさい。

会社のサイトは 

http://www.e-crossroad.jp

Facebookは  

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